サンゴ移植許可申請出し直し 追い詰められているのは沖縄防衛局

20180313にmachikiso's bulogに書いた論考のコピーです。

 

 サンゴ移植許可申請出し直し 追い詰められているのは沖縄防衛局
                       

 沖縄防衛局が名護市辺野古で進めている新基地建設の埋め立て海域で見つかったサンゴの移植は、採捕が許可された「オキナワハマサンゴ」については、3月1日に期限が切れ、移植がおこなわれないまま、許可の失効となり、他の申請については不許可となった。一部報道では、「政治判断だ」という評価もあったが、やや不正確に思う。結論的に言えば、失効及び不許可は、政治判断という要素はほとんど見られず、徹底した審査に基づいて導かれた判断であった。平易な言葉で言えば、沖縄防衛局の採捕許可申請は、「試験移植」としての要件を満たしておらず、申請を出し直しなさいということである。自然保護団体の抗議を受けて、許可を取り消したり、認めなかったということではない。

 ●生態的な知見なく、慎重に審査
沖縄防衛局は、環境省レッドリストに載っている「オキナワハマサンゴ」(絶滅危惧種)、「ヒメサンゴ」(準絶滅危惧種)を「試験移植」の目的で、書類上、5件の申請を行った。
昨年10月26日に申請した「オキナワハマサンゴ」は、県が目安としている45日の「標準処理期間」を大きく超える113日の審査を行い、水産資源の保護培養の趣旨から総合的に判断し許可した。その後、食害が見つかり、移植しないまま3月1日の許可期限が過ぎ、失効となった。県の担当部局は、2カ月の延長をと言ってきたが、それがだとうかどうか判断できない、それよりも申請をやり直した方がいいでしょと、押し返した。
 審査が長期になった理由について、県は、オキナワハマサンゴに関する生態的な知見が十分集積されていず、慎重に対応する必要があったと県は言っている。
環境省は、県の問い合わせに「オキナワハマサンゴが内湾的環境に生息し、波高が低い場所に生息状況から推察すれば、同サンゴの移植先については、波浪、潮流の影響を受けにくいと考える場所を選定する必要があると考えられる」としながらも、「移植先については、必ずしも内湾的環境に限られたものと示されているものではない」と回答している。
 県は、移植後初期の状態把握が必要と判断し、「移植後、当分の間、おおむね1週間ごとに経過観察をおこない、そのつど、県へ報告をおこなうこと」という条件を付けて採捕を許可した。モニターは、何カ月と切るのではなく、移植したサンゴが健全になったことが確認されるまでで、防衛局と協議しながらやっていくのだという。

●食害の発覚 防衛局は、県の主張を受け入れて環境監視等委員会を得ることにし、申請を出し直すことに
一旦、県の許可が出たものの、沖縄防衛局の観察の中で「食害」が見つかった。この新しい事態の中で県は、沖縄防衛局に環境監視等委員会の助言を得るよう求めた。沖縄防衛局は、県の指摘を受け、環境監視等委員会の助言を得ることにした。といっても最初は、何人かの委員に聞いて済まそうとしていたようだが、県は、それにダメ出しをし、あくまで環境監視等委員会を開いて助言を得るべきだと主張したという。このため3月1日までに食害対策をしめすことができないまま、期限切れを迎えた。沖縄防衛局は2カ月の延長を要請したが、県は、2カ月が妥当か判断できないとして、申請の出し直しを求め、許可失効となった。

●3月2日の4件の申請 食害対策示されず、ヒメサンゴの移植先も不適切と指摘
沖縄防衛局は、移植許可が失効した翌日の3月2日、オキナワハマサンゴ、ヒメサンゴの4件の採捕許可を申請した。県は、この申請にたいしても、オキナワハマサンゴについては食害対策が不十分だと指摘し、ヒメサンゴについては、移植先のサンゴモ類の生育状況との関係を考慮するよう提起した。
 県が防衛局に送った文書では、次のような指摘をしている。
 「今回、貴局(沖縄防衛局)職員による報告のとおり食害であるとするならば、本種(オキナワハマサンゴ)における食害の影響は、その生残や再生産にとって非常に憂慮されるべき事象である。オキナワハマサンゴの移植技術を検討するにあたっては、これまでの一般的なサンゴ類の移植にとどまらず、小型種が対象であることを前提に、食害対策に係る計画の検討が不可欠であることがこの度判明したところであるが、本件許可申請においては、その計画はなされていない」
 「本件申請において、移植先で確認されているヒメサンゴは2群体のみであり、いずれも10ミリに満たない大きさで、群体の周辺にサンゴモ類の明らかな繁茂がみられることから、やがてサンゴモ類に覆われて死滅する可能性が高いと考えられる」
 沖縄防衛局の主張だけで移植を進めれば、サンゴの生存は危うい、そのことを顕在化させる指摘である。
環境監視等委員会にもサンゴの移植に関する専門家はいないというのは事実のようだが、それでもサンゴの研究をしている学者も入っている。その専門家の助言なしにことを進めることはできない。あくまで「試験移植」であり、その態をなさなければならない。
 そしてこの県の審査のあり方から見て取れるのは、行政としての厳正審査が、沖縄防衛局にとって巨大な壁となって立ちはだかっているということができる。この壁を前にして、沖縄防衛局はたじろぎ、焦っているのではないだろうか。

●法令上の要件満たさなければ不許可もと翁長知事
 翁長雄志知事は、今後の申請に関して「法令上の要件を満たしていなければ不許可も含め厳正に対処する」としている。基地建設で移植対象となるサンゴは約7万4000件。工事前にサンゴの移植を行うとする留意事項を沖縄防衛局が遵守するのであれば、埋め立て開始がいつになるのか、見通しはたたないということにならざるを得ない。留意事項違反を承知で6月にも埋め立てを開始するのだろうか。追い詰められているのは沖縄県ではなく、政府の方であることは間違いない。

 

 ※その後、沖縄防衛局は、サンゴの移植再申請を行ったが、いまだ県の承認が得られておらず、海水温上昇でサンゴの移植時期に適さなくなってきており、秋以降にしか移植の承認はでないのではないか。にもかかわらず、工事を続けることは、サンゴを守りながら工事を進めるとしてきた防衛局のこれまでの姿勢を投げ捨てることになる。